VRと現地での空間デザインの検証を効率化し、生成AIの時代における評価ツールの体系化を推進

VRで視線脳波等を解析し、空間体験価値を定量化する「ToPolog(トポログ)」の開発・運営を行う株式会社ジオクリエイツ(本社:東京都港区 代表取締役:本田司)は、木質建材メーカーの株式会社エスウッド(本社:岐阜県各務原市 代表取締役: 長田剛和)と共同で、東京都内にあるコワーキングスペースにて、現地とVRの両方で視線脳波計測を用いる実証実験を行い、2023年3月20日に実施された令和4年度の林野庁補助事業の成果報告会にて発表しましたのでお知らせします。
 本実証実験は、木構造振興(株)と(公財)日本住宅・木材技術センターが主催する林野庁の補助事業である令和4年度内外装木質化等の効果実証事業の採択を受けて実施するもので(https://www.koushuukai.com/howtec/230320/)、ジオクリエイツとエスウッドは令和3年度から2年連続で採択されて発展的に取り組んでいます。

実証実験と開発ツールの概要

・実証事業名:コワーキングスペースにおけるVRと現地滞在時間計測を用いた内外装木質化の経済指標調査
・実証期間:令和4年9月1日~令和5年2月10日
・実証実験場所:BIRTH LAB 麻布十番(東京都港区麻布十番2-20-7 麻布十番髙木ビル)
・目的:KPIツリーの考え方を参照し、木質化がどのような効果や経済指標に関連付くかまとめ、手法化する。

1.VR実験
コワーキングスペースの現地をVRで再現し、効率的に検証できるツールを開発し、実験を行いました。壁面等の建材を瞬時に切替えた検証や、歩行移動も可能で距離に応じた違いも検証できます。VR内で印象評価するアンケート機能も実装しています(令和3年度の本実証事業にて国立森林総研と共同開発)。
今回の実証実験では、現地現状の白塗装・エスウッドのストランドボード・OSB・杉板の4種を切り替えて、視線と脳波計測を行い、特に脳波について、リラックス度と集中度の分布を可視化し、どのようなバランスで建材を配置するとどのような感情が得られるか、効率的に確認するツールとしてまとめました。
※脳波については、簡易脳波計と高精度脳波計の整合実験も行った上で、簡易脳波計を基本に使用しています。

2.現地位置情報計測
コワーキングスペース内の各座席の滞在時間を取得し、それぞれの座席における滞在時間の増減や内装の木材率などについての情報を可視化するツールを開発し、実験を行いました。今回の実証実験では、壁面やテーブルの天板を変化させる木質化前後で、それぞれ2週間の計測し、どのように位置情報・滞在時間が変化したかを確認しました。特に壁面をストランドボードで木質化した中2階の席において滞在時間が増えたことが確認されました。その他の席でも滞在時間が増えた席や減った席が確認でき、どのような空間デザインの要素と相関があるのかについて、他の場所での実験結果とも比較して、詳細な分析を進めていきます。

3.現地実験
コワーキングスペース内で、特に壁面をストランドボードで木質化した中2階の席において滞在時間が増えたことを受けて、現地にて一般被験者20名で視線や脳波を計測する実験を実施しました。木質化前後で比較して、木質化後の方がリラックス度が向上することが、p=0.06の有意傾向有りで確認されました。

4.KPIツリー
本実証実験の現地となるコワーキングスペースにおいて、内装木質化の前後で、それぞれ2週間の計測の結果をKPIツリーにまとめました。この結果、木材率を約15%増加させたことで、滞在時間が約5%、売上が約10%向上する結果となりました(KPIツリー内の各値は、壁面とテーブルの天板をストランドボードに変更した中2階席の部分のみで集計しています)。内装材を木材率としてKPIツリーに組込むことで、建材を選択する際の費用対効果・収益を実測・推定できるように体系化していきます。

5.今後の展開
ジオクリエイツは本実証実験成果をもとに、VRでは、木材や木材以外の建材も含めて効率的に印象評価が可能なツールとして機能拡張を進めます。位置情報計測では、木材率や緑視率等に変化がある多様な場所でデータ蓄積を進めるため、大手不動産事業者等との共同実験を準備中です。様々な空間のデータ蓄積・VRやAI等のツール開発を進め、実測・推定によるユーザーの空間体験価値を、売上に紐づく滞在時間等の各KPIとして整理し、生成AIの時代の空間デザインの評価ツールとして体系化していきます。
また、ジオクリエイツとエスウッドは、共同で参加した令和4年度林野庁補助事業の森林・林業 特化型アクセラレーター『SUSTAINABLE FOREST ACTION 2022』(2022年11月5日にデモデイ開催)にて最優秀賞を受賞しており、ツール開発者と建材メーカーの立場から、森と建築をつなぐ動きも進めています。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000037.000038089.html

株式会社ジオクリエイツのVRツール「ToPolog(トポログ)」について

ToPologは、VRのソフトやデバイスを限定せず、VRやデジタルツインやメタバースに関連付けて空間体験データをクラウドに保存することができるSaaS型ツールです。3種のモードを備えており、設計検討や現地調査や現地運用のVRから、視線や脳波を、実測やAI推定することで、空間体験価値を定量化し、デザインの効率や品質を向上させることができます。

株式会社ジオクリエイツ会社概要

設立  : 2012年6月15日
所在地 : 東京都港区西新橋1-7-5 BIRTH TORANOMON
代表者 : 代表取締役 本田 司
資本金 : 1億4050万円(資本準備金含む)
事業内容: VR用SaaS「ToPolog」開発・運営、VR/ARサービスの企画・開発
URL  : https://geocreates.net/
「すべての人に最高の空間体験を!」をビジョンに掲げ、空間体験価値を定量化するVR用SaaS「ToPolog(トポログ)」を展開しています。国内外の様々なインテリアや建築や都市のプログラムでの関与実績から、設計者・事業主・エンドユーザー間の課題を捉え、設計段階や設計前後の現地のVRでの視線や脳波を測定・推定でデータベース化・AI化して、不動産や小売などの空間デザインの民主化を実現します。

株式会社エスウッドの「国産材ストランドボード」について

岐阜県の木質建材メーカーでもあるエスウッド社が開発した「国産材ストランドボード」。国土交通大臣認定不燃材料の認定を取得しており、公共施設をはじめ、店舗、オフィス等の内装や家具・什器の仕上げ材として採用実績が豊富です。また、SDGsの目標達成のため、廃棄物を減らす・活かす実践事例として、木質建材のアップサイクル技術の確立に向けて、プロトタイプの試作伴走の開発から、製作実践まで、多くの案件を取り組んでいます。
今回の実証実験では、各種の生体データ計測に加えて、追加開発した「空間周波数解析」のツールを利用した解析も実施しました。その結果、板目や柾目といった製材された木材の延長にある建材と考えるよりも、森の中のような1/fゆらぎやフラクタルなどの自然界そのものの見た目に近いものであることが示唆されました。他の木質建材とは異なる抽象度を持つものとして、より良い空間デザインにご活用頂けるように、継続的に、性質の説明の掘り下げを進めて参ります。

株式会社エスウッド会社概要

設立  : 平成11年12月28日
所在地 : 岐阜県各務原市須衛町7-74-5
代表者 : 代表取締役 長田 剛和
事業内容: 岐阜県産間伐材など地域材の需要拡大のための技術開発及び共同加工
公的補助:国及び岐阜県の推進する「平成11年度間伐材等利用開発推進事業」により、国産初のストランドボード製造ライン設置資金の45パーセント補助を受けて事業をスタート。
URL  : https://s-wood.jp/

株式会社髙木ビルのBIRTH LABについて​

2019年に麻布十番にオープンしたつながりを重ね、新しいことを生み出すコミュニティスペースです。ブレストや意見交換、プロジェクト進行のための議論を行うなど、コミュニケーションのために人と人とが顔を合わせ、アイデアを出し合う、チームを結成する、プロジェクトを前に進める、誰かが誰かを紹介する、仲間になるといった新しい繋がりを生み出す”セッション”を多数実施してきています。

株式会社髙⽊ビル会社概要

設立  : 昭和36年4⽉20⽇
所在地 : 東京都港区⻄新橋一丁目7番2号
代表者 : 代表取締役 髙⽊ 秀邦
事業内容: オフィスビル・マンション・駐車場の開発・賃貸ならびにその管理運営業務
URL  : https://t-bldg.jp/
​2023年5月には、新しい都市木造の事例として各メディアへの掲載が増えている銀座髙木ビルの竣工も予定されており、本実証実験から発展させた取組も実施予定です。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000036.000040109.html